使うことで環境を守る
国産間伐竹100%竹紙と竹炭インキを使った
サスティナブルパッケージへの挑戦
私たちが「竹紙」なるものに心血を注いで10 年以上の月日が経ちました。
間伐した国産竹100% を使って出来た竹紙は、私たちにとって、未来への約束であり、 印刷会社として日々多くの紙を使う私たちの社会に対する責任でもある。
そう考え、これまで力を入れてきました。
現在国内で使われている紙はほぼ輸入パルプに頼っており、多くの海外の植物を伐採し、 たくさんの燃料を使いCO2を排出して運ばれてきたものです。
国産の竹の間伐材を100%使ってパルプにした竹紙はその分CO2が削減されるだけでなく、荒れた竹林を整備し、大雨で土砂崩れが起きる原因の一つである放置竹林問題を解消し、また竹の定期的な間伐で山に日光が入り、生物多様性を育むことに繋がり山がイキイキとしている地域では微生物や虫、哺乳類も多く生息し、その死骸や糞は肥えた土をつくり、蓄えられた養分が川や里山、海まで流れて豊かな生態系の循環の輪を育てるのです。
私たちの住む鹿児島県は日本一の竹林面積を持ち、古くから筍の出荷も多く、竹林は私たちの暮らしとは密接でした。
歴史的には薩摩藩が琉球経由で唐から運んで広まったと言われる直径約20㎝、高さ最大25mの大きなモウソウチクが多く、筍としてや、竹細工や建築資材としても重宝されてきました。
しかし海外の安い筍の缶詰やプラスチック製品が主流の現代では、高齢化も相まって放置された竹林が増え、間伐しても使い道がない間伐材が竹林に放置され腐り、景観や他の植物にも悪影響を与えており、解決策は県の急務となっていたのです。
そこで放置された間伐竹から紙をつくることを、鹿児島県と中越パルプ工業が協力しスタートしたのです。
竹は1日で1m伸びることもあるという驚きの成長スピードを誇ります。
私たちは竹紙の取組みを知り、こんなにサスティナブルな紙の原料は他にはないと、竹紙を広める活動をはじめました。
竹紙カレンダーや竹紙メモ帳を作っては無償配布し、休日にイベントに参加しては広く竹紙に触れたり興味を持ってもらう機会を作ってきました。
世にあまり知られていない竹紙が一般的な紙と同じように使われ、多くの放置竹林を間伐し整備することに繋がればという願いからの行動でした。
しかし当初は「竹紙は他の紙と比べると高い」という声や「放置竹林より目の前のコスト優先」という声が多くありました。ただでさえ出荷が少なく単価も高い紙になってしまいます。それを作る過程にも理由がありました。
足元も悪い危険な放置竹林で大きな竹を間伐するのは大変な労力が要ります。その伐採した竹の枝を払って切り揃えた竹は根元の方では25kgもあり、重い竹を両肩に担いで運搬車でチップ工場に運びます。
チップ工場では一般的な木材より硬い竹は粉砕機の刃が摩耗しやすく、2 時間おきに刃を交換する必要があるほどで、当初は苦労してチップにしていたチップ工場も努力と改良を諦めませんでした。
チップを紙にする中越パルプ工業も一般的な紙の方がすぐに売れるところを、私たちの「必ず売るから」という声を信じて小ロットながらも生産を続けてくれました。
他の紙より出荷量が少ない竹紙は価格競争が激しい印刷市場においては、参入するチャンスを最初から得られずにいました。
また、独特の短く硬い繊維の竹パルプは全ての紙としての用途に向いていないことも分かりましたが、試行錯誤や幾つもの失敗を糧に、多くの情熱と協力が形になり、パッケージとしてもご提案できるようになりました。
そんな草分け的な存在として挑戦を続けてきた私たちに賛同、協力してくださる企業や団体が増えてきたのは、昨今の目を見張る気候変動の波、毎年だんだんと酷くなるように感じてしまう自然災害を目の当たりにし、世界的に温暖化を食い止める必要を感じる方が増えてきたり、SDGs の取組の一環として竹紙製品に興味を持ってくださる方が増えたのだと思います。
最近では私たちのこの取組を県下の小中学生に知ってもらう為の活動をしたり、各地で放置竹林の手入れを若い世代が汗を流し問題の解決に尽力するという話も聞きはじめました。
ようやく、興味を持って頂きつつある竹紙がもっと広まることを願い、私たちは従来の印刷物に留まらず、脱プラを目指して竹紙ストローや竹紙コップも全国のさまざまな企業協力を得て日本で最初に開発・販売に繋げることが出来ました。
成長の早い竹はまさに理想の循環型資源です。その恵みを計画的に間伐して、有効活用したパッケージが、美しい里山の自然環境や生物多様性を守り、世界の気候変動の問題に貢献し、土砂崩れなどの災害を減らすことに繋がっていきます。
このパッケージの取り組みが、子どもたちに安心して暮らせる未来を手渡していけるバトンになることを心から願っています。